行く末を恐れず、過去に捉われず、今日を通じる

己は扉先に散らかった売り物を別眺めているうちに、不意に暮れに学生時代の近辺と密会していたときのことを思い出して申し訳なくなってきた。
そして、そんな引け目から吹っ切れた。
「でもおそらく、せっかくの席だしメシ行くか」
マイペースな紳士ですなと思いつつ、ボクはあんな旦那が微笑ましかった。
外に出ると、空は夢的赤色い雲がクラスを成していた。
冬至も過ぎ、少しだけ日没歳月が延びたみたいだった。
「己たちって、結婚するんだよな?」
「あんな当たり前の状況、今さら言ってどうしてすんの?それとも、やっぱり諦めるの?」
己がわざとらしくおしゃべりの腰を折るような冗談を抜かすと亭主は急に不感情になり始めた。
珍妙な交信から、ついつい妙な笑いが込み上げてきたが己は震える手でもってようやく扉を施錠する。
「いや、冗談だよ。結婚式決める。何食いたい?」
「さらっと言わないで、もう一回、正しく言って」
「だから、何食いたい?って」
「幾らか、真剣な言い出してるときにはぐらかさないでよ」
何とか、己としては今すぐにでも結婚式したいサロンだったが、それは安定したライフスタイルを手にしてからの状況、つまり惜しくも先になりそうです。
「ボク銀座のお寿司、食べたい。それかフライ」
二グループの男女は世田谷の薄暮の中を冗談を飛ばし合いながら関連睦まじく足並みを取り揃えながら駅舎を目差す。
私の限界にかかっていた霞は皆目と取り除かれていた。
視線の向こうには、歳末なずむ街がどこまでも鮮明に、茫洋と広がる。

(完)

行く末を恐れず、過去に捉われず、今日を通じる